「光回線1Gbpsで契約したのに、実際に測ったら100Mbpsしか出ない」「Wi-Fiルーターを買い替えたのに速度が変わらない」——こんな経験はありませんか?
Wi-Fiの速度が契約時に聞いた数値と実測で大きく異なることは、実は珍しくありません。カタログに記載された「最大○Gbps」という数字はあくまで理論上の最大値であり、実際の使用環境では様々な要因で速度が低下するためです。
この記事では、Wi-Fiの理論値と実測値に差が生まれる仕組みを分かりやすく解説し、速度が遅くなる7つの主な原因と、それぞれの対策を具体的に紹介します。記事を読み終わる頃には、なぜ速度が出ないのかを理解し、改善に向けた具体的なアクションが取れるようになります。
Wi-Fiの「理論値」と「実測値」の違いとは?
Wi-Fiの速度を理解するうえで、まず押さえておきたいのが「理論値」と「実測値」の違いです。この2つの概念を正しく理解することで、なぜ契約速度と実際の速度に差が出るのかが見えてきます。
理論値(最大通信速度)とは
理論値とは、すべての条件が完璧に整った状態で出せる最大速度のことです。ルーターのパッケージや回線サービスの広告で見かける「最大○Gbps」「最大○Mbps」という数字がこれにあたります。
理論値は、電波の干渉がゼロ、障害物がまったくない、通信機器が最高性能を発揮する——といった理想的な環境を前提に算出されています。いわば実験室レベルの数値であり、一般家庭でこの速度が出ることはまずありません。
実測値とは
実測値は、実際にインターネットを使用したときに計測される速度です。Speedtestなどの速度計測サービスで表示される数値がこれにあたります。
実測値は、使用する時間帯、周囲の電波状況、接続する機器の性能、建物の構造など、様々な要因に左右されます。そのため、同じ環境でも時間帯によって速度が変動することも珍しくありません。
理論値の何割が出れば「正常」なのか
一般的に、理論値の30〜50%程度の実測値が出ていれば正常な範囲とされています。たとえば、理論値1Gbps(1000Mbps)の光回線であれば、実測で300〜500Mbps出ていれば問題ないと考えて良いでしょう。
逆に、理論値の10%以下しか出ていない場合は、何らかの問題が発生している可能性が高いといえます。たとえば、1Gbps契約で100Mbps未満しか出ないケースでは、原因を特定して対策を講じる必要があります。
Wi-Fi速度が実測で遅くなる7つの原因
Wi-Fiの実測速度が理論値より遅くなる原因は多岐にわたります。ここでは、特に影響の大きい7つの原因を詳しく解説します。自分の環境に当てはまるものがないかチェックしてみてください。
原因1:ルーターと端末の距離・障害物
Wi-Fiの電波は距離が離れるほど弱くなり、壁や床などの障害物があるとさらに減衰します。特に鉄筋コンクリート造の建物や、水槽・電子レンジなどが電波の経路上にあると、速度が大幅に低下することがあります。
5GHz帯は2.4GHz帯より高速ですが、障害物に弱いという特性があります。ルーターから離れた部屋で使用する場合は、2.4GHz帯のほうが安定することもあります。
原因2:電波干渉
2.4GHz帯は、電子レンジやBluetooth機器、コードレス電話など多くの家電製品と周波数が重なっています。これらの機器が動作しているときにWi-Fiが遅くなる場合は、電波干渉が原因の可能性があります。
また、マンションやアパートでは近隣のWi-Fi電波と干渉することもあります。特に同じチャンネルを使用しているルーターが複数あると、速度低下の原因となります。
原因3:ルーターの性能・Wi-Fi規格の世代
古いルーターを使い続けていると、回線の性能を活かしきれません。Wi-Fi規格は世代によって最大速度が大きく異なります。
| 規格名 | 正式名称 | 最大速度(理論値) | 周波数帯 |
|---|---|---|---|
| Wi-Fi 4 | IEEE 802.11n | 600Mbps | 2.4GHz / 5GHz |
| Wi-Fi 5 | IEEE 802.11ac | 6.9Gbps | 5GHz |
| Wi-Fi 6 | IEEE 802.11ax | 9.6Gbps | 2.4GHz / 5GHz |
| Wi-Fi 6E | IEEE 802.11ax | 9.6Gbps | 2.4GHz / 5GHz / 6GHz |
| Wi-Fi 7 | IEEE 802.11be | 46Gbps | 2.4GHz / 5GHz / 6GHz |
1Gbpsの光回線を契約しても、Wi-Fi 4(802.11n)対応のルーターでは理論値600Mbpsが上限となり、回線の性能をフルに活かせません。光回線の速度を活かすには、少なくともWi-Fi 5以上のルーターが必要です。
原因4:接続している端末の性能
ルーターが最新規格に対応していても、接続するスマートフォンやパソコンが古い規格にしか対応していなければ、そちらの性能がボトルネックになります。Wi-Fiの速度は、ルーターと端末のうち「性能が低いほう」に合わせられます。
5年以上前のスマートフォンやパソコンを使っている場合は、端末の買い替えで速度が改善する可能性があります。端末がどのWi-Fi規格に対応しているかは、製品の仕様書やメーカーサイトで確認できます。
原因5:回線の混雑(時間帯による速度低下)
インターネット回線は、多くのユーザーで共有されています。そのため、利用者が増える時間帯——特に夜の19時〜23時頃——は回線が混雑し、速度が低下しやすくなります。
この現象は特にマンションタイプの光回線で顕著です。マンションでは1本の光ファイバーを複数の世帯で分け合う形式が多いため、同じ建物内で同時にインターネットを使う人が増えると、一人あたりの帯域が狭くなります。
原因6:プロバイダ側の問題
回線そのものではなく、プロバイダ(ISP)の設備が原因で速度が出ないこともあります。プロバイダのサーバーや中継設備が混雑していると、どんなに高速な回線を契約していても、その性能を発揮できません。
IPv6(IPoE接続)に対応したプロバイダに変更することで、混雑を回避して速度が改善するケースがあります。現在PPPoE接続を使用している場合は、IPv6対応への切り替えを検討する価値があります。
原因7:LANケーブルやONU・ルーターの設定
意外と見落とされがちなのが、有線接続部分の問題です。ONUとルーターを接続するLANケーブルが古い規格(CAT5以下)の場合、そこがボトルネックとなります。1Gbpsに対応するには、CAT5e以上のLANケーブルが必要です。
また、ルーターの設定で帯域制限がかかっている、QoS(通信の優先順位付け)が不適切に設定されているなど、設定面の問題で速度が制限されていることもあります。
Wi-Fi速度を改善する具体的な対策
原因が分かったところで、具体的な改善策を見ていきましょう。費用がかからない方法から順に紹介しますので、まずは無料でできる対策から試してみてください。
対策1:ルーターの設置場所を見直す
費用ゼロで試せる最初の対策は、ルーターの設置場所の見直しです。以下のポイントを意識して配置を変えてみてください。
- 家の中心に近い場所に設置する
- 床に直置きせず、1m程度の高さに設置する
- 電子レンジや水槽から離す
- 金属製の棚や壁の近くを避ける
- 窓際よりも部屋の内側に設置する
対策2:接続する周波数帯を変更する
多くのルーターは2.4GHz帯と5GHz帯の両方に対応しています。現在接続している周波数帯を変更することで、速度が改善する場合があります。
ルーターと同じ部屋や隣の部屋で使用する場合。障害物が少なく、高速通信を優先したいとき。動画視聴やオンラインゲームなど、大容量通信を行うとき。
ルーターから離れた部屋で使用する場合。壁や床を隔てて接続する場合。速度より接続の安定性を優先したいとき。
対策3:ルーターを再起動する
ルーターは長期間稼働し続けると、メモリの蓄積やプロセスの滞留により動作が不安定になることがあります。月に1回程度、電源を抜いて30秒ほど待ってから再起動することで、速度が回復するケースがあります。
同様に、ONUやモデムも再起動すると効果的です。再起動の際は、ONU→ルーターの順で電源を入れ、それぞれ起動完了を待ってから次の機器の電源を入れてください。
対策4:Wi-Fiチャンネルを変更する
近隣のWi-Fiと同じチャンネルを使用していると電波干渉が起こり、速度が低下します。ルーターの管理画面からチャンネルを変更するか、「自動」に設定して空いているチャンネルを自動選択させましょう。
Wi-Fiアナライザーアプリ(スマートフォン用の無料アプリが多数あります)を使えば、周囲のWi-Fi電波の混雑状況を確認できます。空いているチャンネルを選ぶことで、干渉を減らせます。
対策5:ルーターを新しい規格に買い替える
使用しているルーターがWi-Fi 5以前の規格の場合、Wi-Fi 6以上のルーターに買い替えることで速度が大幅に改善する可能性があります。Wi-Fi 6は複数の端末が同時接続しても速度が落ちにくいOFDMA技術を採用しており、家族で複数の端末を使う環境で効果を発揮します。
2024年以降、Wi-Fi 7対応ルーターも各社から発売されています。将来の端末更新を見越して、最新規格のルーターを選ぶのも一つの選択肢です。ただし、端末側もWi-Fi 7に対応していないとその性能は発揮できない点に注意してください。
対策6:中継機やメッシュWi-Fiを導入する
広い家やルーターから離れた部屋で速度が出ない場合は、中継機やメッシュWi-Fiシステムの導入が効果的です。
中継機は比較的安価(3,000円〜10,000円程度)で導入でき、ルーターの電波を中継して届く範囲を広げます。ただし、中継するたびに速度は半減するというデメリットがあります。
メッシュWi-Fiは複数のユニットが連携して家全体を1つのネットワークでカバーするシステムです。中継機より高価(2〜3万円程度)ですが、移動しても自動的に最適なユニットに接続し直すため、安定した通信が可能です。
対策7:IPv6(IPoE)接続に切り替える
夜間に特に速度が落ちる場合は、回線の混雑が原因の可能性があります。IPv6(IPoE接続)に対応したプロバイダに切り替えることで、混雑を回避できる場合があります。
IPv6 IPoE接続は、従来のPPPoE接続で発生していた「網終端装置」の混雑を回避する仕組みです。多くのプロバイダがIPv6に対応しており、追加料金なしで利用できるケースも増えています。現在の契約がIPv6に対応しているかは、プロバイダのマイページや問い合わせ窓口で確認できます。
対策8:回線そのものを見直す
上記の対策を試しても改善しない場合は、回線そのものの変更を検討する価値があります。マンションタイプのVDSL方式(最大100Mbps)を使用している場合は、光配線方式への切り替えや、別の光回線サービスへの乗り換えで大幅に速度が向上する可能性があります。
最近では、NURO光やeo光、コミュファ光など、2Gbps以上のプランを提供する光回線サービスも増えています。エリアや建物の条件が合えば、こうした高速回線への乗り換えも選択肢になります。回線の変更を検討する際は、各サービスの公式サイトでエリア確認を行ってください。
Wi-Fi速度の正しい測り方
速度改善の効果を確認するためにも、正しい方法でWi-Fi速度を測定することが重要です。測定条件によって結果が大きく変わるため、以下のポイントを押さえて測定してください。
おすすめの速度測定サービス
速度測定には、信頼性の高い以下のサービスがよく利用されています。
Speedtest by Ookla(https://www.speedtest.net/)は世界で最も利用されている速度測定サービスです。ダウンロード速度、アップロード速度、Ping値を測定できます。
Fast.com(https://fast.com/)はNetflixが提供するシンプルな速度測定サービスです。アクセスするだけで自動的に測定が始まり、主にダウンロード速度を確認できます。
みんなのネット回線速度(https://minsoku.net/)は日本のユーザーが測定結果を投稿しているサイトです。自分と同じ回線・プロバイダを使っている人の実測値を参考にできる点が特徴です。
正確に測定するためのポイント
- 他のアプリやブラウザタブを閉じて、測定以外の通信を止める
- 複数回(3回以上)測定して平均値を取る
- 時間帯を変えて測定する(昼間と夜間で比較)
- ルーターの近くと離れた場所の両方で測定する
- 可能であれば、有線接続での速度も測定してWi-Fiとの差を確認する
用途別:必要な実測速度の目安
「速度が遅い」と感じても、実際の用途によって必要な速度は異なります。以下の目安を参考に、自分の使い方に十分な速度が出ているかを確認してください。
| 用途 | 必要な下り速度の目安 |
|---|---|
| メール・SNS閲覧 | 1〜5Mbps |
| Webサイト閲覧 | 5〜10Mbps |
| YouTube(HD画質) | 5〜10Mbps |
| YouTube(4K画質) | 20〜25Mbps |
| Netflix(4K UHD) | 25Mbps以上 |
| オンラインゲーム | 30〜100Mbps(Ping値も重要) |
| Zoom・Web会議 | 10〜25Mbps |
| 大容量ファイルのダウンロード | 100Mbps以上が快適 |
普段の利用がWebサイト閲覧やSNS、動画視聴程度であれば、30〜50Mbps出ていれば快適に使えるケースがほとんどです。一方、オンラインゲームや大容量ファイルのダウンロードを頻繁に行う場合は、100Mbps以上の実測速度があると快適です。
よくある質問(FAQ)
- Wi-Fiの実測速度が契約速度の10分の1しか出ないのは異常ですか?
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理論値の10%以下しか出ていない場合は、何らかの問題が発生している可能性があります。ルーターの規格が古い、設置場所が悪い、回線やプロバイダに問題があるなど、原因を特定して対策を講じることをおすすめします。まずは有線接続で速度を測定し、有線でも遅いか、Wi-Fiだけ遅いかを切り分けてみてください。
- 1Gbpsの光回線で実測どのくらい出れば正常ですか?
-
一般的に、理論値の30〜50%程度が出ていれば正常な範囲とされています。1Gbps(1000Mbps)の回線であれば、実測で300〜500Mbps出ていれば問題ありません。ただし、マンションタイプのVDSL方式の場合は、最大100Mbpsに制限されるため、その範囲内での速度となります。
- 夜になるとWi-Fiが遅くなるのはなぜですか?
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夜の19時〜23時頃はインターネット利用者が増える時間帯であり、回線やプロバイダの設備が混雑するためです。特にマンションタイプの回線では、同じ建物内の利用者が増えることで速度が低下しやすくなります。IPv6(IPoE)接続に切り替えることで、混雑を回避できる場合があります。
- ルーターを買い替えれば速度は必ず速くなりますか?
-
ルーターの買い替えで速度が改善するのは、現在のルーターがボトルネックになっている場合です。たとえば、1Gbps回線でWi-Fi 4対応ルーターを使っている場合は、Wi-Fi 6対応ルーターに買い替えることで改善が期待できます。一方、回線やプロバイダ側に問題がある場合は、ルーターを買い替えても速度は変わりません。
- 5GHzと2.4GHzはどちらを使うべきですか?
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ルーターと同じ部屋や隣の部屋で使用し、高速通信を優先したい場合は5GHzがおすすめです。壁や床を隔てて接続する場合や、ルーターから離れた部屋で使う場合は、障害物に強い2.4GHzのほうが安定することがあります。両方試して、より速度が出るほうを選んでください。
- Wi-Fi 6EやWi-Fi 7に変えれば速度は大幅に上がりますか?
-
Wi-Fi 6E、Wi-Fi 7は最新の規格であり、対応する端末との組み合わせで高速通信が可能です。ただし、現在の回線速度が1Gbps程度であれば、Wi-Fi 6でも十分に対応できます。また、端末側も同じ規格に対応していないとその性能は発揮できません。将来を見越した投資として検討するのは有効ですが、現時点で劇的な改善を期待するのは避けたほうが良いでしょう。
- 中継機とメッシュWi-Fiはどちらがおすすめですか?
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コストを抑えたい場合は中継機、広い家で安定した通信を優先したい場合はメッシュWi-Fiがおすすめです。中継機は安価ですが、中継するたびに速度が半減するデメリットがあります。メッシュWi-Fiは初期費用が高めですが、移動しても自動で最適なユニットに接続し直すため、広い家や複数階建ての住宅に適しています。
まとめ
Wi-Fiの実測速度が契約速度と違う原因と、具体的な改善策を解説しました。最後に、重要なポイントを整理します。
Wi-Fiの理論値と実測値に差が出るのは正常なこと。理論値の30〜50%出ていれば問題なし。
速度低下の主な原因は、ルーターの設置場所、電波干渉、機器の規格、回線の混雑、プロバイダの問題など。原因に応じた対策が必要。
まずは費用のかからない対策(設置場所の変更、周波数帯の変更、再起動)から試し、改善しない場合はルーターの買い替えやプロバイダの変更を検討する。
Wi-Fiの速度問題は、原因を正しく特定できれば解決できるケースがほとんどです。この記事で紹介した対策を順番に試して、快適なインターネット環境を手に入れてください。

